FCバルセロナスクール福岡校の育成  1/2

FCバルセロナスクール福岡校の育成

By SOCCER NAVI? 2011年2月25日

Posted in: インタビュー, 指導者・育成

(C)Makoto Sakamoto

現在、多くの日本人選手が海外のクラブチームに移籍し活躍をしている。高校の卒業を待たずにアーセナルと契約し、レンタル先のフェイエノールトで、日本人選手最年少ゴールを決めた宮市亮選手など、年々移籍年齢が下がる傾向にある。

宮市選手の様に10代で活躍する選手は、日本では稀だが海外では多く存在する。それは、何故なのか?ジュニア世代の教育の大切さとは何なのか?その哲学で多くの選手をトップチームに輩出するバルセロナ。そのバルセロナスクール福岡校でコーチを務める、イバン氏と村松氏に日本と海外の育成の違いや、サッカーに対するクラブの取り組み方などを伺った。

※質問には、イバンディレクターに応えて頂き、村松コーチに通訳して頂きました。

-バルセロナスクール福岡校開校の経緯を、教えて下さい。

【イバン】福岡に拠点を置く企業が、バルセロナにプロジェクトを提出し、その際に日本でスクールを立ち上げる1校目のスクールとして、福岡のプロジェクトが評価されました。第1校目が福岡に選ばれたのは、そのような理由です。

-通常のクラブチームではなく、スクールとして開校したのは?

【イバン】バルセロナスクールの本校も、競争の為のスクールではなく、あくまでも子供達を育成するという教育的な視点を重要視しています。海外でスクールを立ち上げる際にも、大会に出場して戦って勝負をするという方向ではなくて、あくまでも子供達にバルサらしいトレーニングを提供するという形で、スクールという形態をとりました。

-スクールでの指導のテーマを教えて下さい。

【イバン】サッカーを通じて、選手としてだけでなく人としての成長を目指す総合的な教育を子供達に提供するというのが、我々のメインのテーマです。

-最初、日本の子供達のプレーを観た感想。指導後、変化は表れましたか?

【イバン】第一印象は、カテゴリーによって違いますが、ジュニア世代のプレーを観た印象は、スペインで行われているサッカーと「とても差がある、違いのあるプレーをしている」というのが第一印象でした。

オーガナイズ(組織)というのは殆んど無く、試合の流れが安定しない。(ボールを)取って取られてが継続的に続く、単調なリズムのプレーが多くて、スペインでプレーされているサッカーとはとても違うと思いました。

日本で指導を始めて、日本人らしい規律正しさや、素直な性格を、どのように有効活用できるかを考えました。活用の仕方によって子供達は良い方向に進む事もあるし、違う方向に進む事もあるという事が、ここで指導して分かってきました。

我々は子供達が自ら判断してプレーすることを求めています。彼らの規律正しさを利用すれば、我々が期待するような自ら判断してプレーをする選手に育つと思います。日本の子供達は、そのキャパシティーを持っていると、気付きました。規律正しいというのは、決して「ロボットのように言われたとおりに動く」ということではなく、この特徴を上手く利用すれば子供たちは様々な方向に育っていきます。

-日本の子供達のプレーで良い点・悪い点をお聞かせください。

【イバン】子供達の改善すべき点は、全ての事を教えてあげないとピッチの中で思い通りにプレーできないことです。全て教えて欲しいという願望をもってサッカーをやろうとしているのが、大きな欠点だと思います。サッカーというのはそうではなくて、状況の変化に臨機応変に適応しなければいけない。全て教えて欲しいという姿勢が、欠点だと言えるでしょう。これは、ここでスクールを始めたときから、現在まで続く大きな欠点だと思います。我々は常に改善しようと取り組んでいます。

長所に関しては、子供達の集中力。同時に学習意欲も高いです。それゆえ、トレーニングに集中するので、トレーニング効果がとても現れやすいです。

日本の子供達はトレーニングというものを、学習の為、レベルアップする為のものであると捉えています。集中してそこから多くのことを学ぼうという姿勢をもっていますね。一方、スペインをはじめ、海外ではトレーニングを満喫する、楽しむ場であると考えている選手が多いです。学ぼうという気持ちより、楽しもうという気持ちが強いので、そこでトレーニングの効果は変わってきます。

ただ、日本の子供達は余りにも真面目に学ぼうとしてしまう為に、練習を楽しめない時も沢山あって、良いバランスを保つ事に苦労しています。

-少し話は変わりますが、アジア杯は観られましたか?日本代表が一部報道で「アジアのバルセロナ」と呼ばれました。観た感想を教えて下さい。

【イバン】何試合かは、観ました。南アフリカW杯での日本代表の戦い方と比較すれば、今回のアジア杯での日本代表というのは、バルサっぽいプレーが出来ていたという捉え方も出来るかもしれません。

W杯の時には、もっと守備的に戦っていましたが、監督が変わったことでプレースタイルも変わりました。日本代表が、バルサらしいボールを大切にするコンビネーションプレーに取り組んでいることも理解できますし、ピッチ上でも、それが表現されている時もあると思います。

ただそれを、バルサと比較するレベルにあるかというと、まだそのレベルには達していないと思います。バルサらしいプレーというのは、攻撃時の素早いパス回し、コンビネーションプレーというのが注目を浴びて、それを踏まえた上でバルサらしいという表現を使う事が多いと思います。しかし、私の視点から観ますと現在のバルサがバルサらしいポイントというのは、ディフェンスの部分だと思います。

ボールを奪った瞬間に、チームとして如何に素早く、高い位置で、ボールを奪い返すのか。その部分があって、初めて今のバルサは成り立つ。ボールをどの様に回しているとか、ボールを如何に大切に扱っているかというところで、バルサらしいという表現をするのは余りにも短絡的であって、もっと奥深いところに今のバルサの秘密は隠れていると思います。

-スクールの目標があれば、教えてください。

【イバン】短期、中期的な目標として僕等が期待するのは、子供達自らが、状況を判断しながらバルサらしいサッカーを満喫してくれる事です。日本で行われているサッカーとは違った視点から、サッカーの魅力、楽しみ方というものを、ここで日本の子供達に伝えていきたいです。自らプレーするという、バルサらしいサッカーを満喫してくれたら嬉しいです。

長期的な目標としては、なるべく良い選手を育てて勿論バルサが獲得したいと思うような選手が出てきてくれたら嬉しいですが、それが難しいとしても、この地域(=福岡)で活躍できるような素晴らしい選手をより多く育成できたらとても嬉しいですし、それが地域のレベルアップに貢献する事にも繋がってくると思います。

サッカー選手としてだけではなく、人としてもきちんと成長して、良い人間であり良い選手であり、そのような人材を育てて行きたいと思います。

-最後になりましたが、日本人のバルセロナの選手は誕生するでしょうか?

【イバン】とても難しい事だと思いますけど、可能性というのは十分あると思います。実際に、香川や長友にバルサが興味を持っているという噂も流れたくらいです。しかも、日本は進化している過程なので、このまま良いリズムでレベルアップを続ければ、日本からバルサの選手が生まれる可能性はあるでしょう。ただ、今のレベルをバルサが維持して行くと難易度は高いし、尚且つレギュラーとしてプレーするというのは更に難しくなると思います。

日本人だけではなく、外国人がバルセロナのトップチームでプレーするというのは、今現在とても難しい流れになってきています。下部組織(カンテラ)が上手く機能しているので、次々とバルサらしい選手が育ってくる中、それを差し置いて外国人枠を使いながら、日本人がバルサのトップチームでプレーするというのは、下部組織上がりの選手を更に上回るレベルの選手でなければならない。同等のレベルの選手であれば、下部組織の選手を選ぶので、そういう意味では難しい部分もありますね。しかし、不可能ではないと思いますし、とても魅力的な目標だと思います。

◆イバン・パランコ・サンティアゴ(FC BEscola福岡テクニカルディレクター)

<経歴>バルセロナの大学を卒業後、体育教師を務めながら数チームで主に育成部門で指導を重ねる。2008年から、FCバルセロナ・エスコラ部門のコーチに就任。

◆村松 尚登(FC BEscola福岡コーチ)

<経歴>千葉県立八千代高校卒。筑波大学体育専門学群卒。

スペインで12年の指導歴を持ち、スペインサッカー協会上級コーチングライセンス(日本でのS級ライセンスに相当)取得。2006年からFCバルセロナのスクール部門のコーチに就任。2009年9月よりFCバルセロナスクール福岡校のコーチに就任。「テクニックはあるが、サッカーが下手な日本人」等著書も多数執筆。

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